先日、東京都知事選が執行され、小池都知事の2選が決まりました。
はたから見れば予想どおり。という意見が多いですが、
見方を選挙を執行する側に変えてみましょう。
今年はコロナの影響もあり、
投票所や演説会場での人の密集の回避
コロナ禍で選挙をやるのか!といったようなクレーム対応
など非常に大変な期間だったと思います。
そういうことで、今回は自治体の業務の一つである選挙事務について、その過酷さについて語ります。
公務員への就職や転職を考えている人にとって、配属されるかもしれない選挙運営側の仕事内容について理解してもらえたら幸いです。
また、公務員関係なく、選挙の裏側で働いている人ってこういうことやっているんだ、ということをざっくり分かっていただけるように書きました。
次選挙があったとき、公務員へ同情してもらえることを期待します。
【この記事でわかること】
- 自治体の仕事の一つである選挙事務の仕組みがざっくりわかります。
- 選管の過酷な労働環境が体験できます。
選管はやっぱりブラック。しかし、使命感を持てば仕事の意義が見えてきます

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選挙の運営は基本的には公務員、全体の運営は選挙管理委員会事務局が行っている。
公務員目指している人であればお気づきかもしれませんが、
投票所で入場整理券の受付をして、投票用紙を配布して投票箱へ案内している人
彼らは公務員です。その町の役所の人間です。
また、実際にご覧になったことはないかもしれませんが、投票が終わったあと、体育館などの開票所で開票作業に従事しているのも公務員です。
選挙の仕事はかなり大規模になり一つの部署で処理できる事務ではないため、投票所の運営や開票事務などには、役所の他部署の職員の力を借りているんです。
そして、選挙事務を総括的に行っているのが各自治体の選挙管理委員会事務局です。
略して選管とも呼ばれます。
投票所や開票所で当日の事務を行っている職員は、いわゆるその日限りの応援です。
対して、選管は、その人たちが働く環境や投票所、開票所の運営など選挙に関する全体の事務を仕切っています。
期日前投票期間は土日関係なく仕事
ここ数年で期日前投票の投票率がどんどん上がっています。
投票日当日の投票は住所によって決められている投票所でのみ投票ができるのに対し、
期日雨投票であれば、指定された期日前投票所であれば、どこでも投票ができるという利便性があるからなんですね。
期日前投票ができる期間は、その選挙の告示日の翌日から投票日当日の前日までなのですが、
当然この期間中は、期日前投票所を運営し、日ごとに何人投票があったかを確認する事務が発生します。
つまり期日前投票期間は投票開始から投票終了まで、選管は待機し、仕事をしなければなりません。
期日前投票期間は選挙によって異なります。
実は上述した告示のタイミングというのが選挙によって法律で決まっています。
衆議院選挙 投票日から数えて12日前
参議院選挙 投票日から数えて17日前
知事選挙 投票日から数えて17日前
市長選挙 投票日から数えて7日前
市議選挙 投票日から数えて7日前
といった具合です。
国政選挙や知事選挙は長いですよね。単純にこの期間は期日前投票を運営する必要がありますので、選管は土日関わらず連続して出勤です。
期日前投票だけの仕事を書いていますが、もちろん、これ以外にも当日投票所の準備、開票の準備など業務量は膨大です。
現実的には期日前投票開始の一か月ぐらい前には土日のうち、どちらかは出勤して仕事をしたり、夜遅くまで残業をしなければならない日が始まります。
投票日の当日は最もツライ?
そんなこんなで投票日の当日を迎えました。
みなさん投票日当日って何時から何時まで投票できるか知っていますか?
朝7時から夜8時まで現行法では投票できることとなっています。
ところで、最近「零票確認ガチ勢」という言葉が選挙のとき、twitterのトレンドにも上がったりします。
これは、各投票所の一番乗りが、その投票箱の中が確かにカラであることを確認する行為を指します。
まあ、ありえない話ですが、投票所で仕事をしている職員が前日のうちに細工をして、投票箱の中に特定の候補者の投票用紙を入れていれば、不正選挙など簡単にできてしまいます。
こういった不正を防止するため、公職選挙法にも定められた由緒正しき儀式なのです。
朝は6時前に集合、間に合わない場合は最悪泊まります。
投票が朝7時開始ということなので、現場の職員は朝6時には集合します。
そして、現場の職員が6時に集合ということは、選管はそれよりも前の時間に出勤します。
もし投票所の職員が寝坊などで遅刻をしてしまったら大変なので、ちゃんと出勤しているか確認をする必要があるからです。
ところで、
朝6時よりも前の時間に出勤って、始発にのっても間に合わない職員がどうすればよいのでしょうか?
もちろん職場に泊まります!
投票日当日も忙しさMAX
投票が始まると、特に問題が起きない限りはのらりくらりと夜8時までの投票時間を過ごすことになります。
もちろんその間何も仕事がないわけはなく、
夜から始まる開票所の準備や、市民からの問い合わせ対応に終始忙殺されます。
投票日当日の問い合わせは結構厄介です。
というのも、期日前投票期間であれば、その間は投票できる機会はありますが、
投票日当日の場合、この機会を逃したら執行されている選挙の投票権を失うことになってしまうからです。
そのため、投票ができる、できないに関するハードなクレームを受けることも多いです。
20時間連続勤務は当たり前?早朝まで続く開票作業
やっとのことで投票が終わった、とほっとする暇もなく開票が始まります。
開票の流れとしては、市内各地の投票箱を、開票所として指定している場所(たいていは市内で一番大きい体育館)へ運びます。
そしてすべての投票箱がそろい、開票時刻になったら、投票箱に入っている投票用紙を取り出して、候補者ごとに分類・計数し、最終的にどの候補者が何票獲得したかを正確に確認・発表し終了となります。
投票日当日の夜8時以降、投票箱を積んだタクシーが開票所へ向けて列を作りながら投票箱を運んでいます。
ぜひ選挙のときに確認してみてください。結構圧巻ですよ笑。
1票のズレが命取りに!
開票は、夜遅くの作業なので、体力と集中力を保つための精神力が必要です。
開票作業は期日前から始まった投票行為のゴール地点であり、
最終的に選管が投票者に交付した投票用紙の枚数と実際に投票箱に入れられた投票用紙の枚数が合っているかどうか、という壮大な答え合わせの場となります。
ちなみに、この交付数と投票用紙の枚数ですが、結構ズレます。
大体のケースは、投票箱に入っている投票用紙の枚数が交付数より少なくなることが多いです。
交付数>投票箱に入っている投票用紙の枚数
この理由として「交付した投票用紙を投票箱に入れず持ち帰った」と解釈し「持ち帰り票」として扱います。
各自治体の開票結果に「持ち帰り票1」と掲載されたりします。
問題なのは交付数<投票箱に入っている投票用紙の枚数となった場合です。
これはどういうことかというと、
100人に投票用紙を1枚ずつ渡したが、開票時に計算してみたら101枚でてきた、
ということです。
これはおかしいですよね。
100人いたとして、1枚ずつ渡したら交付数は100枚となり、投票箱に入っている投票用紙の枚数は同じく100枚(あるいはそれ未満)でなければならない・・・しかし、1枚多いというわけです。
考えられるケースとしては、投票用紙を誰かに誤って2枚交付した可能性があります。
これだと一人一票の原則が保てず、不公平な選挙になってしまいますよね。
こういうケースが起きると、「〇〇市で二重交付のミス」という見出しで新聞に載ったり、ニュースで取り上げられたりして、エライ人が謝ることになります。
たかが1票のズレで新聞に載るほどの事件になってしまうのが選挙事務の怖さなんです。
開票の流れから少し話は飛んでしまいましたが、開票作業は規模が大きい自治体であればあるほど、長時間に及びます。
投票用紙の枚数が多くなるので、候補者ごとに分類する作業や計数する作業や、投票用紙の枚数が合っているかの確認作業
が膨大な量となり、ひどい場合は翌日の早朝までかかることもあります。
まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は都知事選にあやかって役所の部署の業務の一つである選挙事務を具体的に書いてみました。
よく「〇〇日連勤したから、この会社ブラックだ・・・。」と漏らす人もいますが、
その基準でいけば選管は間違いなくブラックです。
労働基準法など知ったこっちゃありません。
とはいえ、民主主義の根幹である選挙の仕組みを正確に成り立たせるためにはこういった仕事が必要です。
役所内でそういった使命感を持てる唯一の部署なのかもしれませんね。